竹内まりやさんとは随分会っていなかった。
何年も前に山下達郎さんの楽屋に顔を出した時以来だろう。
でもこちらとしては春先のTVで元気なお顔を見ているから不思議な気分だ。
それも大好きな桜の木の映像と一緒だったし・・・。
約束の時間までにメインボーカルを仕上げた僕は内心ほっとしていた。もうすでに一仕事終えた感じだ。
このあとのまりやさんとのコーラスイメージは出来ているからだ。
それに引換え、スタッフはかなり緊張している様子だった。
何故だろう?まりやは恐くないよ。
ター坊や美奈子さんじゃないんだけどなあ・・・。(ア、お二人とも決して恐くはありませんが)
僕らが雑談をしているときに突然彼女は現れたのだった。
「やあ元気!お久しぶり。」
驚いたのはテレビで見るよりも昔と変わらない姿だった。さすがにジーンズが細い。
しばらくは懐かしい話題で盛り上がり、スタッフも和んだあたりでいよいよスタートだ。
まりやと一緒に歌うなんていつ以来なんだろう?
お互いに記憶をたどったが恐らく、アン・ルイスさんのカーペンターズ・カバーアルバムでのカレンとリチャード以来だよねということだった。(あのコーラスは最高の出来栄えだから何処かで聞いて欲しいものだ。)
佐橋くんのイントロからメインボーカル、そしてコーラスパートへと続く。
〜「あの頃の僕らは、美しく愚かに」
想像はしていたが、それを遥かに超えるハーモニーがスタジオに響き渡った。
あまりにもうれしくて、こらえきれずに思わず笑ってしまった。
「エッ?ちがった?」
違ってないよ。最高だよ。
ビックリするのは以前よりもマッチングしちゃう声になった事だった。
僕は途中から裸足になったりして、ちょこちょこと難しい注文を出しながら積み重ねられていく二人の声に聞きほれていた。
スタジオのノウハウは知ったけど、気分はすっかり学生時代に戻っていた。
「いいよ、すごくいいとおもう。安部君の味がよく出てるよ。」
まりや様から最上級のお褒めの言葉をいただきスタッフ一同笑顔の花が咲いていた。
27年前の松本隆さんの詞が胸に染みます。
オリジナル「五線紙」の時と変わらぬほど、いやそれ以上に充実した録音の日々でした。
最高のプレゼントをありがとうね。