「ADLIB」誌1月号の中で名作バラードの1曲として「裸足のバレリーナ」が取り上げられていました。うれしい事です。
自宅でメロディが宿った瞬間から確かな手応えがあり、デモテープを作るのにも熱が入ったのでした。
アップテンポのリズムものはそれなりの技術があれば曲としてまとめる事は出来るものですが、バラードはなかなかそうは行きません。力の無い作品はどこかに無理が生じるものです。
そういった意味でもこの曲はシンプルにスムーズに流れるように出来上がったのでした。
1982年の作品ですが、最初のデモテープはポール・マッカートニーのアルバム「ラム」に通じるような感じのスウィート感だったと思います。その後、清水信之との作業の中、あのサウンドに辿り着いたのでした。いったいどこからあのイントロが生まれてきたのか、ノブ(信之)の豊かな才能には驚かされてばかりでした。
松本隆さんの最初に書いてくれた詩に対し何故不服だったのかは今となっては忘れてしまったが、徹夜して書き直してくれた詩を読んで不覚にも涙した瞬間は痛かった。そしてLPが発売されると、ある雑誌に「裸足のバレリーナ」というエッセイを掲載していただいたのには深く感動しました。
ボーカルはすべて一人多重録音でした。最近のデジタル・レコーディングでは同じフレーズがあるとコピー&ペイストという作業で処理してしまうアーティストも多いですが、あの頃は永遠と歌いつづけていたので、このエンディングを聞いていると相当時間がかかっていたんだよなあと思い出しました。
そして、リフレインの最後の最後にやっと言葉の違うバージョンが登場してくるのですから付き合わされたスタッフは大変だったと思います。
当時の日本の売れ線としては歌謡曲色の強いものじゃないとダメだったことも有り、さすがにA面にはしてもらえませんでしたが、耳の肥えた敏感な職人肌の方々からは絶大なる支持を頂きました。
その後、この曲から発展させたと思われるヒット曲がいくつか現れているので不思議な気分です。